長期インターンの無給が違法かどうかは、「インターン」という名前では決まりません。学生が労働基準法の労働者に当たるかどうかで決まります。

労働者に当たれば最低賃金以上の給料が要る

労働基準法第9条は、労働者を「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。学生でも、インターンという呼び方でも、この定義に当てはまれば労働者です。

労働者には最低賃金法が適用されます。会社は、最低賃金額以上の賃金を払わなければなりません。学生と会社が合意して最低賃金より低い額を決めても、その部分は無効になり、最低賃金と同じ額を決めたものとみなされます。

無給も同じです。労働者に当たる学生を無給で働かせれば、働いた時間分の最低賃金を払っていないことになります。地域別最低賃金を払わない会社には、50万円以下の罰金という罰則があります。

たとえば東京都で、週3日・1日5時間の実務を無給で12週続けたとします。2026年10月1日以後の東京都の最低賃金1,280円で計算すると、払われるべき賃金は230,400円です。

反対に、学生が労働者に当たらないなら、給料が出なくても最低賃金法の違反にはなりません。会社説明や職場見学が中心のプログラムがこれに当たります。時給の下限や都道府県ごとの最低賃金の額は、長期インターンの時給の記事で説明しています。

労働者かどうかの判断基準

インターン生が労働者に当たるかについて、厚生労働省は平成9年の通達で考え方を示しています。長野労働局のリーフレットは、次のような実態があれば労働者に当たると整理しています。

  • 見学や体験的な要素が少ない
  • 会社から業務に関わる指揮命令を受けている
  • 学生が直接の生産活動に従事し、その利益や効果が会社に帰属する
  • 実態として何らかの報酬が払われている

文部科学省・厚生労働省・経済産業省のインターンシップの考え方(いわゆる3省合意)も、会社と学生の間に使用従属関係などがある場合は労働関係法令が適用されることがあり、その場合は会社が法令を守る必要があるとしています。

厚生労働省は、労働者かどうかは契約の形式や名称にかかわらず、実態をもとに総合的に判断するとしています。判断の柱は2つです。仕事が会社の指揮監督のもとで行われているか。報酬がその労働の対価として払われているか。

指揮監督の有無は、仕事の依頼を断れるか、仕事の進め方を細かく指示されるか、勤務の場所や時間を決められているか、などで見ます。

3つの例で考える

1日の職場体験で、社員の説明を聞き、学生どうしで課題に取り組んだ。成果は会社の業務に使われない。この場合は、見学や体験の要素が大きく、労働者に当たりにくい例です。

週3日、決められた時間に出社し、社員の指示で営業先のリストを作り、電話でアポイントを取った。取れたアポイントは社員の商談に使われた。この場合は、指揮命令を受けて会社の業務をしており、労働者に当たりやすい例です。

記事の本数だけを決めて執筆を引き受け、書く日時や場所は自由だった。この場合は、指揮監督の程度によって判断が分かれます。書き方を細かく指示され、締め切りまで毎日の作業時間を報告させられていれば、労働者に近づきます。

給料が必要になるかの目安

会社の業務を、指示を受けて担当しているか

見学や説明が中心で、業務は担当していない労働者に当たりにくく、無給でも違法とは限らない
指示どおりに業務をこなし、成果が会社に使われる労働者に当たりやすく、最低賃金以上の給料が要る
業務委託やボランティアという名前で働いている名前ではなく実態で判断される

出典:長野労働局「インターンシップ生受入れにおける留意点」、厚生労働省「フリーランスとして働く皆さまへ」

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見学・体験型と実務型の違い

同じインターンでも、中身によって扱いが分かれます。説明や見学が中心なら、労働者に当たらないことが多くなります。会社の業務そのものを担当していれば、労働者に当たる方向に傾きます。

見学・体験型と実務型の違い

見学・体験型(労働者に当たりにくい)

  • 会社説明、職場見学、社員の話を聞く
  • 課題は学生の学びのためのもので、会社の売上に使われない
  • 参加や進め方の指示は最小限

実務型(労働者に当たりやすい)

  • 社員と同じ業務を担当する
  • 成果物が会社の営業や売上に使われる
  • 勤務日・時間・作業内容を指示される

出典:長野労働局「インターンシップ生受入れにおける留意点」。最終的には実態で総合的に判断されます。

長期インターンで、営業のアポイント取り、記事の執筆、SNSの運用、開発などを任され、その成果を会社が使うなら、労働者に当たる可能性が高くなります。

3省合意は、学生のキャリア形成支援の取組を4つの型に分けています。就業体験を必須としない「オープン・カンパニー」と「キャリア教育」は、インターンシップとは呼ばないことになりました。説明会型のプログラムに給料が出ないのは、この区分とも合っています。

長野労働局は、インターンシップは原則として労働契約を前提としておらず、繁忙期の人手確保などの目的で使ってはならないとも注意しています。

3省合意では、就業体験を含むインターンシップの基準として、汎用的能力活用型は5日間以上、専門活用型は2週間以上の実施期間を挙げています。就業体験があるというだけで労働者になるわけではありません。会社の業務を指示どおりにこなしているかどうかが分かれ目です。

無給のまま実務を任された時

最初は体験だと聞いていたのに、いつの間にか社員と同じ業務をしている。そんな時は、次の順で動きます。

無給で実務を任されたときの進め方
  1. 1記録を残す勤務日と時間、指示された内容、作った成果物
  2. 2条件を確かめる契約書や募集時の説明に給料の定めがあるか
  3. 3会社に相談する雇用契約に切り替えて時給を払えるか聞く
  4. 4外部に相談する総合労働相談コーナーや労働基準監督署

会社が雇用契約に切り替えると言ったら、時給、勤務時間、支払日を書面で受け取ります。労働基準法第15条は、会社が労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を示さなければならないと定めています。賃金と労働時間は、決められた方法で明示する事項です。

記録は、勤務の開始と終了の時刻、チャットやメールでの指示、提出した成果物が中心です。あとで労働者に当たるかを判断するときの材料になります。

労働者に当たると判断されれば、さかのぼって賃金を請求できる可能性があります。厚生労働省によると、2020年4月1日以後に支払期日が来る賃金の請求権の時効は、当分の間3年です。

成果に応じた報酬だけで時給がない、という条件もあります。労働者に当たる場合、労働基準法第27条により、出来高払制でも会社は労働時間に応じた一定額の賃金を保障しなければなりません。

ほかにも気になる点がある求人の見分け方は、あやしい長期インターンの見分け方の記事にまとめています。

業務委託・ボランティアとの違い

給料ではなく、業務委託の報酬や「ボランティア」という形で受け入れる会社もあります。業務委託は、仕事の完成や事務の処理を引き受ける契約(請負や委任)です。雇用契約ではないので、本来は仕事の進め方を本人が決め、会社から細かい指揮命令を受けない働き方です。

ただし、契約書の名前が業務委託やボランティアでも、それだけで決まりません。厚生労働省は、契約の形式や名称にかかわらず、実態で判断するとしています。出勤日と時間を指定され、社員の指示どおりに作業しているなら、労働者に当たる可能性があります。

長野労働局は、作業時間に応じた給付金や食事代が支給される事例を、問題になりうる例として挙げています。謝礼や交通費といった名目でも、時間に応じたお金が出ているなら、実態は賃金に近いと見られることがあります。

相談先

全国の労働局や労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーは、予約不要で無料です。厚生労働省は、学生や就活生からの相談も受けるとしています。土日祝日と年末年始は休みです。

相談の中で労働基準法などの違反が疑われる場合は、行政指導の権限を持つ労働基準監督署などに取り次がれます。

業務委託として働いていて、自分は労働者ではないかと考える人向けには、全国の労働基準監督署に相談窓口があります。労働者に当たるかどうかの基準の説明や、働き方の自己診断チェックリストを使った確認をしています。

大学のキャリアセンターに相談するのも一つの方法です。

Day91に載せるのは、有給の長期インターンの求人だけです。長期インターンの基本は長期インターンとはの記事で説明しています。

この記事は、2026年10月2日時点で厚生労働省・労働局・e-Gov法令検索が公表している情報をもとにした一般的な説明です。労働者に当たるかどうかは、個々の働き方の実態で判断されます。個別の状況は、総合労働相談コーナーや労働基準監督署に確認してください。