辞める理由は4つの層に分かれる

インターン生が辞める理由は、大きく4つに分けられます。どれも会社の側で手を打てる部分があります。

辞める理由の4つの層と、会社が動かせる部分
層起きていること会社が動かせる部分
条件のずれ求人や面接で聞いた話と、実際の仕事・時間・時給が違う求人票と労働条件通知書を実態に合わせる
時間の衝突授業、試験、就職活動、ほかのアルバイトと勤務がぶつかるシフトの決め方と、繁忙期の扱いを先に決める
成長実感の欠如何ができるようになったか分からない。評価がない振り返りの場と、時給を見直す時期を決める
関係の薄さ相談相手がいない。仕事の意味が見えない指導役を決め、定期的に話す時間をとる

辞める前に、小さなサインが出ることがあります。連絡が遅くなる、シフトが減る、質問をしなくなる、などです。サインに気づける仕組みも定着の一部です。

条件のずれをなくす

最初に潰すべきなのは、条件のずれです。労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に契約を解除できると定めています。ずれは法律上も辞める理由になります。

求人票に書いた業務内容、勤務時間、時給は、労働条件通知書でもそのまま書きます。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示事項です。担当する仕事が広がる予定があるなら、最初から書いておきます。

求人票の書き方は長期インターン求人の書き方で、明示のルールは長期インターンの労働法チェックリストで詳しく説明しています。

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最初の2週間のオンボーディング

最初の2週間は、インターン生が続けるかどうかを判断する時期です。この期間に次のことを済ませます。

  1. 初日に、指導役と連絡手段と勤怠のつけ方を伝える
  2. 最初の仕事は、1日から数日で終わり、結果が見えるものにする
  3. 分からないときに誰に何で聞けばよいかを決めておく
  4. 1週目の終わりに、15分でよいので振り返りの時間をとる
  5. 2週目の終わりに、次の1か月で任せる仕事を伝える

長期インターンが、初めての仕事という学生もいます。社内用語や、報告の頻度、チャットの使い方など、社員には当たり前のことも言葉にして伝えます。

指導役の負担も設計する

指導役の社員が忙しすぎると、質問に答える時間がなくなります。インターン生は聞きにくくなり、仕事が止まります。指導役の業務量を受け入れ前に減らすか、質問を受ける時間帯を決めておきます。

指導役を1人に固定すると、その人が休んだときに相談先がなくなります。副担当を決めておくと、関係が1本の線に頼らずに済みます。

シフトの柔軟性を先に決める

学生は、学期や試験期間で使える時間が大きく変わります。勤務とぶつかったときにどうするかを、入社前に決めておきます。

  • 週の最低勤務時間と最低日数。契約上の所定労働時間は、試験期間も守れる現実的な数字にする
  • シフトを出す期限と、変更を受け付ける期限
  • 試験期間に勤務を減らしてよいか。減らせる幅はどれくらいか
  • リモートで働ける業務と、出社が必要な業務の区別
  • 就職活動の面接などで急に休むときの連絡方法

収入が増えすぎないよう、勤務時間を調整したい学生もいます。年収と扶養の関係は学生向けの扶養の壁の記事で説明しています。勤務時間を減らす相談を受けやすい雰囲気をつくると、黙って辞められるより会社にとっても損が小さくなります。

所定労働時間を変えるときは、本人と合意し、労働条件を書面などで改めて示します。週20時間以上になると雇用保険の要件に関わる場合もあるため、変更前に確かめます。

任せる仕事を段階的に広げる

同じ作業が続くと、成長が見えにくくなります。最初の3か月で任せる仕事を、月ごとに決めておきます。

任せる仕事の広げ方の例(SNS運用の補助の場合)
時期任せる仕事振り返りで見ること
1か月目決められた形式で投稿文を作る。社員が確認してから出す作業の速さと、指示どおりにできているか
2か月目投稿の反応を集計し、週1回報告する数字を正しく集められているか
3か月目反応をもとに、次の投稿の案を出す数字から理由を考えられているか

表は一例です。自社の仕事に合わせて、月ごとに一段ずつ難しくします。任せる範囲が広がったことは、時給を見直すときの根拠にもなります。

リモートで働く場合は、仕事が見えにくくなります。作業の開始と終了の報告、週1回の画面越しの面談など、やり取りの回数を出社のとき以上に決めておきます。

評価と時給改定の時期を決める

成長が見えないことは、続ける理由を弱くします。評価と時給の見直しを、いつ、何を基準に行うかを決めて伝えます。

昇給に関する事項は、労働契約を結ぶときに明示する労働条件の1つです。「頑張り次第で昇給」だけでなく、見直す時期と、見る項目を書きます。たとえば「3か月ごとに、担当業務の範囲と成果をもとに時給を見直す」という形です。

最低賃金の改定にも注意が要ります。2026年度の一覧では、東京都の答申された改定額は1,280円で、改定前は1,226円です。発効日は2026年10月1日です。

最低賃金の近くで時給を決めていると、改定で新しく入った人の時給が、長く働いている人に追いつくことがあります。改定の時期に合わせて、続けている人の時給も見直すと、不公平感を防げます。

東京都の最低賃金の改定(2026年度)
1,226円1,280円
  1. 1,226円改定前
  2. 1,280円2026年10月1日から時給が最低賃金の近くだと、新しく入った人が追いつくことがある

改定の時期に合わせて、続けている人の時給も見直す

継続手当で節目をつくる

長期インターンでは、最初の3か月が仕事を覚える時期にあたります。この節目に合わせて手当を払う制度をつくることができます。

たとえば「3か月(90日)続けた人に、91日目以降に継続手当を払う」という制度です。続ける理由が目に見える形で増えます。会社にとっても、教育コストをかけた人に残ってもらう投資になります。

継続手当は、会社が労働者に払う賃金です。制度にするときは、次の点を決めて、労働条件通知書や就業規則に書きます。

  • 支給の条件(何日勤務したら、何回出勤したら、など)
  • 金額
  • 支払日と支払い方法
  • 条件を満たす前に辞めた場合の扱い

1か月を超える期間ごとに払う賃金は、最低賃金の計算には入りません。時給そのものは最低賃金以上にしたうえで、上乗せとして設計します。法律上の扱いはインターンの手当と法律で詳しく解説しています。

サインに気づく仕組み

辞める理由は、本人が言い出す前に積み上がっています。週1回の短い面談で、次のような質問を続けると、小さな変化に気づきやすくなります。

  • 今週の仕事で、やりにくかったことは何か
  • 来月、授業や試験で忙しくなる時期はあるか
  • 今の仕事量は多いか、少ないか
  • 次にやってみたい仕事はあるか
  • 困ったときに聞ける人はいるか

答えを記録しておくと、時給の見直しや仕事の割り振りを話し合うときの材料になります。

辞めた人だけでなく、続いている人にも理由を聞きます。何が続ける理由になっているかが分かれば、次の求人票にそのまま書けます。

辞めるときの扱いも先に決めておく

どれだけ仕組みを整えても、学業や就職活動で辞める人はいます。退職に関する事項も、労働契約を結ぶときに明示する条件です。何日前までに伝えるか、引き継ぎをどうするかを決めておきます。

辞めるときの扱いがはっきりしていると、学生は相談しやすくなります。相談が早ければ、勤務時間を減らして続けるなど、辞める以外の選択肢も話し合えます。

自社の定着を数字で記録する

定着の仕組みが効いているかは、自社の記録で確かめます。採用した人ごとに、入社日、3か月に届いたか、辞めた日と理由を残します。

記録は、本人との面談のメモと合わせて残します。人数が少ないうちは、割合より一人ひとりの経過を見るほうが役に立ちます。辞めた時期が最初の2週間に集中しているならオンボーディングを、試験期間に集中しているならシフトのルールを見直す、という使い方です。

辞めた時期から見直す仕組みを決める

辞めた時期はどこに集中しているか

最初の2週間オンボーディングを見直す
試験期間シフトのルールを見直す

定着のチェックリスト

  • 求人票、面接の説明、労働条件通知書の内容がそろっている
  • 指導役と相談先が決まっている
  • 最初の仕事が、短期間で終わり結果が見えるものになっている
  • 週1回、短くても話す時間がある
  • 試験期間と就職活動の時期の勤務ルールがある
  • 時給を見直す時期と基準を伝えている
  • 最低賃金の改定時に、全員の時給を確かめている
  • 3か月などの節目に、評価や手当の機会がある
  • 辞めるときの手続きが決まっている

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