インターン生も防止措置の対象になる
長期インターンのパワハラ防止で最初に押さえるのは、法律上の立場です。有給の長期インターン生は、雇用契約を結んだ労働者です。雇用契約としての扱い全体は長期インターンと労働法で説明しています。
労働施策総合推進法31条は、職場で優越的な関係を背景とした言動により、雇用する労働者の就業環境が害されないよう、相談体制の整備などの措置を講じるよう事業主に義務づけています。この規定は、2026年10月1日の改正で30条の2から31条に移りました。厚生労働省のパワハラ防止指針は、労働者にはパートタイム労働者など非正規雇用を含む、事業主が雇用するすべての労働者が入るとしています。
セクハラも同じです。男女雇用機会均等法11条は、職場の性的な言動により、雇用する労働者が不利益を受けたり就業環境が害されたりしないよう、措置を講じるよう求めています。
さらに2026年10月1日から、均等法13条により、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も事業主の義務になりました。厚生労働省のパンフレットは、求職活動等の例にインターンシップへの参加を挙げています。雇う前の選考中の学生や、無給のインターンシップの参加者も守る対象です。
その学生は会社とどういう関係か
出典:労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、厚生労働省パンフレット
パワハラの6類型と学生に起きやすい例
指針は、職場のパワハラを3つの要素をすべて満たすものとしています。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導は、パワハラに当たりません。
3つすべてを満たすとパワハラになる
指針は代表的な言動を6つの類型に分け、該当すると考えられる例を挙げています。インターン生に当てはめやすい例を表にしました。
| 類型 | 指針が挙げる例(抜粋) |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴打、足蹴り、物を投げつける |
| 精神的な攻撃 | 人格を否定する言動、他の労働者の面前での大声の威圧的な叱責を繰り返す |
| 人間関係からの切り離し | 1人を集団で無視し、職場で孤立させる |
| 過大な要求 | 必要な教育を行わないまま到底対応できない目標を課し、達成できないと厳しく叱責する。私的な雑用を強制する |
| 過小な要求 | 嫌がらせのために仕事を与えない |
| 個の侵害 | 職場外でも継続的に監視する。病歴などの機微な情報を本人の了解なく他の人に暴露する |
インターン生は経験が浅く、教育を受けないまま仕事を任されやすい立場です。指針の過大な要求の例は、新卒採用者に必要な教育を行わないまま高い目標を課すものです。インターン生に任せる仕事は、教える時間とセットで渡します。
チャットでのやり取りにも注意します。指針は精神的な攻撃の例に、相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を、その相手を含む複数の労働者宛てに送ることを挙げています。インターン生の成果物への指摘は、全員が見るチャンネルではなく、本人との個別のやり取りで具体的に伝えます。
一方で、指針は該当しない例も示しています。遅刻などを再三注意しても改善されない人に一定程度強く注意すること、育成のために現状より少し高いレベルの業務を任せることなどです。指導そのものを避ける必要はありません。
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Day91の掲載について見る飲み会の扱い(20歳未満・参加の強制)
長期インターンの飲み会も、職場に当たる場合があります。厚生労働省のパンフレットは、勤務時間外の懇親の場でも、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するとしています。判断は、職務との関連性、参加者、参加が強制か任意かなどを考えて個別に行います。
飲酒には年齢の制限もあります。二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律1条は、20歳未満の者は酒類を飲用してはならないと定めています。大学1・2年生のインターン生には、20歳未満の人もいます。
- 参加は任意とし、不参加を評価や仕事の割り振りに影響させない
- 20歳未満の参加者がいる会では、酒類を勧めない。店にも伝えておく
- ノンアルコールの飲み物を用意し、飲む量を勧めない
- 業務の延長とされる会では、社内と同じ言動のルールが適用されると事前に伝える
- 会のあとの二次会や私的な誘いを、インターン生に強く勧めない
恋愛・私的な連絡の線引き(セクハラ)
セクハラ防止指針は、性的な言動を、性的な内容の発言と性的な行動に分けています。発言には性的な事実関係を尋ねることなど、行動には性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ることなどが含まれます。
厚生労働省のパンフレットは、求職者等へのセクハラの例として、インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、相手が苦痛に感じて意欲が低下することを挙げています。同じパンフレットが示す、社内に方針を周知する文書の例にも、許さない行為として「執拗に私的な食事やデートに誘うこと」が入っています。
社員とインターン生の間には、評価や時給を決める側と決められる側という関係があります。学生は誘いを断りにくい立場です。社内では次のようなルールを決めて伝えます。
指針が問題にするのは、相手の意に反する性的な言動です。本人が嫌だと言わなくても、立場の差から断れずにいるだけのことがあります。評価や時給の決定に関わる社員は、インターン生への私的な誘いを控えるよう、社内の方針として示しておくと線引きがはっきりします。
- 業務の連絡は会社の決めたツールで行い、私的なSNSでの連絡を求めない
- 1対1の面談は、業務時間内に社内やオンラインの会議室で行う
- 交際や容姿、性的な事実関係について尋ねない
- 断られた誘いを繰り返さない
パンフレットは、求職者等へのセクハラを防ぐ取組例として、面談の時間と場所の指定、実施体制、やり取りに使うSNSの種類の指定などの規則を定め、社員と求職者等に知らせることを挙げています。選考中の学生と会うときも、同じルールを使えます。
相談窓口の作り方
指針が事業主に求める措置は、大きく4つです。方針の明確化と周知、相談に応じる体制の整備、事後の迅速で適切な対応、プライバシーの保護と不利益な取扱いの禁止の周知です。
方針の明確化では、パワハラの内容と、行ってはならない旨の方針を、管理監督者を含む労働者に知らせます。指針は、行為者に厳正に対処する旨と対処の内容を、就業規則などの服務規律の文書に定めることも求めています。インターン生の指導役になる社員には、受け入れの前に研修や説明の機会を設けると、指導と叱責の違いをそろえられます。
相談窓口は、相談に対応する担当者を決めるか、外部の機関に委託して設けます。パンフレットは、窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応ができる窓口であることが必要としています。面談だけでなく、電話やメールなど複数の方法で受けられるよう工夫することも勧めています。
インターン生にとって、相談先がメンターしかいないと、メンターとの問題を相談できません。窓口はメンター以外の人にし、初日に名前と連絡方法を伝えます。受け入れ全体の段取りはインターン生の受け入れ準備にまとめています。
相談したことを理由に不利益な取扱いをすることは、法律で禁じられています(労働施策総合推進法31条2項、男女雇用機会均等法11条2項)。学生が社外に相談したいときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーが窓口になります。選考中の学生には、大学のキャリアセンターなども相談先になります。
起きた時の対応の順番
- 1相談を受ける相談者のプライバシーを守る
- 2事実関係を迅速かつ正確に確認する相談者と行為者の双方、必要なら第三者から聞く
- 3被害者に配慮する措置をとる引き離し、謝罪、不利益の回復など
- 4行為者に適正な措置をとる就業規則などに基づく
- 5再発防止の措置をとる方針を改めて周知する
出典:厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」
事実の確認では、相談者の心身の状況や受け止めにも配慮します。被害者への配慮には、関係改善の援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、労働条件上の不利益の回復、メンタルヘルス不調の相談対応などがあります。
行為者が社員ではなく、インターン生どうしの場合もあります。指針は、同僚からの集団による行為なども優越的な関係を背景とした言動に含めています。インターン生の間で起きた相談も、同じ窓口と手順で受けます。
相談した学生が、その後の勤務を続けにくくなることもあります。勤務日やチームを変える、リモート勤務に切り替えるなど、本人の希望を聞いて選べる形にします。辞めることを選んだ場合も、相談したことを理由に不利な扱いをしない点は変わりません。
インターン生は勤務日が少なく、相談から対応までに間が空きやすい立場です。誰がいつまでに何をするかを決め、本人に途中の状況を伝えます。聞き取りの内容、日時、とった措置は記録に残します。記録は相談者と行為者のプライバシーに配慮し、見られる人を限って保管します。辞める理由を早く拾う仕組みは長期インターンの定着も参考になります。
この記事は、2026年10月2日時点の法令と厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な説明です。個別の事案がハラスメントに当たるかどうかや対応の方法は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や弁護士・社会保険労務士に確認してください。
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