有給の長期インターンは労働者として扱う

労働基準法は、事業に使用され、賃金を支払われる人を「労働者」と定めています。職業の種類は問いません。学生かどうかも関係ありません。

文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」も、企業と学生の間に使用従属関係などがある場合は労働関係法令が適用されることがあると明記しています。

長野労働局の資料は、次のような実態があれば労働者に当たると整理しています。

  • 見学や体験の要素が少ない
  • 使用者から業務の指揮命令を受けている
  • 学生が直接の生産活動に従事し、その利益や効果が事業所に帰属する
  • 実態として何らかの報酬が支払われている

時給を払い、社員の指示で実務をしてもらう長期インターンは、この条件にほぼ当てはまります。ここから先は、労働者として雇う前提で進めます。

チェックリスト一覧

長期インターンの労務チェックリスト
項目やること主な根拠
1 労働条件の明示契約時に書面などで条件を渡す労働基準法15条、同法施行規則5条
2 最低賃金勤務地の最低賃金以上の時給にする最低賃金法、地域別最低賃金
3 労働時間・休憩・休暇1日8時間・週40時間、休憩、年次有給休暇労働基準法32条・34条・39条
4 労災保険1人でも雇えば加入する労働者災害補償保険法
5 雇用保険昼間学生は原則対象外。例外を確かめる雇用保険法
6 社会保険働き方と学生かどうかで加入を判断する健康保険法、厚生年金保険法
7 源泉徴収給与から所得税を源泉徴収する所得税法183条
8 就業規則・賃金台帳常時10人以上の事業場は就業規則。賃金台帳は全員分労働基準法89条・108条

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1 労働条件の明示

労働契約を結ぶときは、賃金や労働時間などの条件を明示する義務があります。施行規則5条が明示する項目を決めています。

次の項目は、書面の交付で明示します。本人が希望した場合は、ファクスや電子メールなどでも明示できます。電子メールの場合は、本人が出力して書面にできるものに限られます。

  • 契約の期間と、有期契約を更新する場合の基準
  • 就業の場所と業務の内容。それぞれの変更の範囲も含む
  • 始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇
  • 賃金の決め方、計算と支払いの方法、締め日と支払日
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示事項になりました。リモート勤務の有無や、担当業務が広がる可能性があるなら、ここに書きます。

昇給、賞与や手当の定めがあるときも明示事項です。労働基準法15条2項は、明示された条件が事実と違う場合、労働者は即時に契約を解除できると定めています。求人票の段階の書き方は長期インターン求人の書き方で解説しています。

長期インターンは、3か月や6か月などの有期契約にすることもあります。その場合は、契約を更新する場合の基準も明示します。通算の契約期間や更新回数に上限を設けるなら、その上限も書きます。厚生労働省は、労働条件通知書のモデル様式を公開しています。

2 最低賃金

時給は、勤務地の地域別最低賃金以上にします。2026年度(令和8年度)の一覧では、答申された改定額は東京都が1,280円、大阪府が1,231円、全国加重平均が1,177円です。

発効日は都道府県で違い、2026年10月1日から12月2日までの間に順次発効します。発効日の前後で時給の見直しが必要か、勤務地ごとに確かめてください。

最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。厚生労働省は、賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは対象外と案内しています。手当を足して最低賃金を上回る形にはできません。

3 労働時間・休憩・休暇

労働時間は、休憩を除いて1日8時間、1週40時間までです。これを超えて働かせるには、労使協定(36協定)を結んで届け出る必要があります。時間外労働には、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を払います。

休憩は、労働時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上です。労働時間の途中に与え、自由に使わせます。授業の合間に入る短いシフトでも、6時間を超えるなら休憩が要ります。

1日の労働時間と休憩の境目
6時間8時間
  1. 6時間超えると休憩45分以上授業の合間の短いシフトでも同じ
  2. 8時間1日の上限。超えると休憩1時間以上超えて働かせるには36協定と2割5分以上の割増賃金

労働時間は休憩を除いた時間。1週間の上限は40時間

午後10時から午前5時までの深夜に働かせた場合も、2割5分以上の割増賃金が必要です。夜に作業が発生しやすい仕事では、勤務時間の上限を決めておきます。

年次有給休暇は、雇い入れから6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に与えます。週の所定労働時間が30時間未満の人は、週の所定労働日数に応じた日数です。たとえば6か月時点で、週4日なら7日、週3日なら5日、週2日なら3日です。

4 労災保険

労災保険は、パートやアルバイトを含む全ての労働者が対象です。雇用形態の名前は関係ありません。厚生労働省は、労働者を1人でも雇っている事業場は加入が義務付けられていると案内しています。

保険料は全額を事業主が負担します。学生本人の給与から差し引くものではありません。初めて人を雇う会社は、労働保険の成立手続きから始めます。

5 雇用保険

雇用保険の被保険者になる要件は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることです。ただし「昼間学生」は原則として被保険者になりません。

昼間学生でも、次のような人は被保険者になります。卒業見込みで卒業前から働き、卒業後も同じ事業所で働く予定の人、休学中の人などです。夜間の学部などに通う学生は昼間学生に当たらないため、要件を満たせば被保険者です。

学生の雇用保険の判断

インターン生は昼間学生か

昼間学生原則として被保険者にならない卒業後も同じ事業所で働く予定の人、休学中の人などは例外
夜間の学部などの学生要件を満たせば被保険者週20時間以上・31日以上の雇用見込み

なお、2028年10月1日からは、週の所定労働時間の要件が「20時間以上」から「10時間以上」に変わる予定です。

6 社会保険(健康保険・厚生年金保険)

社会保険は、2つの基準で判断します。1つ目は、週の所定労働時間と月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上かどうかです。当てはまれば被保険者です。この基準には、学生かどうかの条件はありません。

2つ目は、4分の3に満たない短時間労働者の基準です。特定適用事業所で働き、週の所定労働時間が20時間以上で、学生でない人が対象です。大学や短大の学生はこの基準では対象外です。ただし日本年金機構のQ&Aでは、卒業後も同じ事業所で働くことになっている人、休学中の人、定時制や通信制の課程に在学する人などは、この「学生」から除かれます。

特定適用事業所は、現在は被保険者の総数が51人以上の企業などです。日本年金機構によると、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上に広がります。

特定適用事業所の範囲が広がる時期
  1. 1現在:51人以上被保険者の総数
  2. 22027年10月から:36人以上
  3. 32029年10月から:21人以上
  4. 42032年10月から:11人以上

出典:日本年金機構。大学や短大の学生は、この短時間労働者の基準では対象外

7 源泉徴収

インターン生に払う時給は給与です。給与を払う会社は、支払いの際に所得税を源泉徴収し、翌月10日までに納めます。

税額の求め方は、本人が「給与所得者の扶養控除等申告書」を出しているかで変わります。出していれば税額表の甲欄、出していなければ乙欄です。雇用契約の期間が2か月以内などの条件に当てはまれば、日額表の丙欄を使います。

学生は、ほかのアルバイト先で申告書を出していることがあります。入社時に確かめてください。年収と扶養の関係は、学生向けの扶養の壁の記事で説明しています。

8 就業規則・賃金台帳

常時10人以上の労働者を使う事業場は、就業規則を作って労働基準監督署に届け出ます。長野労働局の資料は、この人数は原則としてパートタイム労働者などの非正規労働者も含めて数えると説明しています。

賃金台帳は、人数に関係なく事業場ごとに作ります。賃金を払うたびに、計算の基礎と金額を記入します。

雇う前の準備の順番

  1. 仕事内容と勤務時間を決め、労働者として雇う前提を社内でそろえる
  2. 勤務地の最低賃金を確かめて時給を決める
  3. 初めて人を雇うなら、労働保険の成立手続きをする
  4. 労働条件通知書を作る。モデル様式を使うと項目の漏れを防げる
  5. 雇用保険と社会保険の加入要件に当たるかを、本人の在学状況と勤務時間で確かめる
  6. 扶養控除等申告書の提出先を本人に確かめ、源泉徴収の方法を決める
  7. 賃金台帳と出勤簿を用意する

この記事は2026年10月2日時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な説明です。個別の判断は、社会保険労務士・弁護士・都道府県労働局や労働基準監督署にご確認ください。

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