長期インターンの交通費の支給は法律上の義務ではない

大学生のインターン生に交通費を払う義務を定めた法律はありません。厚生労働省の検討会の資料も、通勤に要する費用を使用者が支給することは義務づけられておらず、支払いを強制する法律はないと整理しています。

一方で、払うと決めた通勤手当は、労働基準法上の賃金です。労働の対償として払われるものとして扱われ、払う日や計算方法を決めて守る必要があります。

正社員に払っているなら同じ基準にする

パートタイム・有期雇用労働法8条は、短時間・有期雇用労働者と正社員の待遇に、不合理な差をつけることを禁じています。週の所定労働時間が正社員より短い人や、期間を定めて雇う人がこれに当たります。週3日勤務や6か月契約の長期インターン生も含まれます。

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインは、短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当を払わなければならないとしています。正社員には交通費を払い、インターン生には払わないという扱いは、説明がつきにくくなります。反対に、正社員にも通勤手当を払っていない会社なら、インターン生だけに払う義務は生じません。払うかどうかを決める前に、社内のほかの雇用形態の扱いを確かめます。

ただし、払い方まで同じにする必要はありません。ガイドラインは、週4日以上働く人には月額の定期券の金額を払い、週3日以下や出勤日数が変わる人には日額の交通費を払う例を、問題とならない例として挙げています。

支給するなら就業規則と労働条件に書く

常時10人以上の労働者を使う事業場は、就業規則に賃金の決定、計算、支払の方法を書き、労働基準監督署に届け出ます。通勤手当も賃金なので、支給する場合は就業規則に定めます。

厚生労働省のモデル就業規則は、通勤手当を月額の上限の範囲内で、通勤に要する実費に相当する額を払うという形で示しています。決めておく項目は次のとおりです。

  • 支給の対象:出社して働く日の通勤
  • 計算の方法:定期券の額か、出社日ごとの実費か
  • 上限:1か月または1日あたりの上限額
  • 経路:もっとも経済的で合理的な経路で計算するか
  • 支払の時期:給与と一緒に払うか、精算の締め日はいつか

定期券の額か、出社日の実費か

長期インターンは週2〜3日の出社で組むこともあります。出社日数が少ないと、定期券の額より日ごとの実費の方が安くなることがあります。

たとえば往復600円の経路で週3日、4週で12日出社すると、実費は7,200円です。1か月の定期券が10,000円なら、実費で払う方が2,800円少なく済みます。週5日、4週で20日出社すると実費は12,000円になり、定期券の方が2,000円安くなります。

出社日数で変わる払い方の選び方

週3日の出社

  • 実費は12日分で7,200円
  • 定期券より2,800円少ない
  • 日額の実費で払う方が合う

週5日の出社

  • 実費は20日分で12,000円
  • 定期券より2,000円多い
  • 定期券の額で払う方が合う

往復600円、1か月の定期券10,000円、4週で計算した例

精算の手続き

実費で払うなら、通勤経路と片道の運賃を最初に届け出てもらい、出社した日の記録と照らして月ごとに精算します。勤怠の記録と同じ締め日にすると、計算がずれにくくなります。引っ越しや経路の変更があったときは、届け出直してもらいます。

雇い入れるときは、労働基準法施行規則5条により、賃金の決定、計算、支払の方法を書面で示します。通勤手当の有無と計算の方法も労働条件通知書に書いておくと、入社後の食い違いを防げます。

通勤手当は、残業代の計算の基礎となる賃金から除くことができます。最低賃金と比べる賃金にも含めません。交通費を足して最低賃金に届く形にはできないので、時給そのものを最低賃金以上にします。

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通勤手当の非課税限度額

所得税では、通勤手当は一定の額まで非課税です。電車やバスで通う人は、もっとも経済的で合理的な経路と方法で通った場合の通勤定期券などの額が非課税です。上限は1か月15万円です。

新幹線や特急の運賃も、その経路と方法がもっとも経済的で合理的なら非課税の範囲に入ります。グリーン料金は含まれません。遠方から通う学生に特急料金を払うなら、経路が合理的かを確かめてから決めます。

マイカーや自転車で通う人は、片道の通勤距離で非課税の限度額が決まります。国税庁の表の一部は次のとおりです。

マイカー・自転車などで通う人の非課税限度額(1か月あたり)
片道の通勤距離非課税限度額
2km未満全額課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,300円
15km以上25km未満13,500円

限度額を超えて払った分は給与として課税され、払った月の給与に上乗せして源泉徴収します。自転車で片道2km未満の学生に手当を払う場合は、全額が課税になる点に注意します。

インターンの交通費と扶養:税と健康保険で扱いが違う

インターン生にとって大事なのは、交通費が扶養の判定に入るかどうかです。答えは、税と健康保険で違います。

通勤手当を含めるか含めないか

含めない

  • 所得税の給与収入(非課税限度額まで)
  • 最低賃金と比べる賃金
  • 割増賃金の計算の基礎(除外できる)

含める

  • 健康保険の扶養で見る年間収入
  • 社会保険に入る人の報酬月額
  • 労働基準法上の賃金

出典:国税庁、日本年金機構、厚生労働省の公表資料

所得税では、非課税限度額までの通勤手当は収入に入りません。親の扶養控除の判定に使う給与収入にも入りません。限度額を超えた部分だけが給与収入に加わります。

健康保険の扶養では、日本年金機構が、労働契約の内容から年間収入を見込むときの賃金に諸手当を含めるとしています。通勤手当有と書かれているだけで額がはっきりしない場合は、この方法で判定できないとも説明しています。19歳以上23歳未満の学生は、年間収入150万円未満が基準です。

たとえば時給1,280円で週3日・1日5時間、52週働くと、給与は998,400円です。往復600円の交通費を週3日分払うと、1年で93,600円です。所得税の判定は998,400円で行い、健康保険の扶養では合計1,092,000円で見込みます。

健康保険の扶養で見る年間収入の例
998,400円給与(時給1,280円・週15時間・52週)93,600円交通費(往復600円・週3日・52週)1,092,000円健康保険の扶養で見る額

インターン生が勤め先の健康保険と厚生年金に入る場合も、通勤手当は保険料の計算に含まれます。日本年金機構は、資格取得届に書く報酬月額に通勤手当も含めるとしています。週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3以上なら、学生でも加入します。

学生が年収を調整しているときは、交通費の額を労働条件通知書に書いて渡すと、本人と家族が判断しやすくなります。年収の壁の全体はインターンの扶養と年収の壁で説明しています。

在宅勤務の日の扱い

出社とリモートを組み合わせる長期インターンでは、在宅勤務の日の交通費をどうするかを決めておきます。法律の決まりはないので、会社が選びます。

  • 出社した日の分だけ、実費を日額で払う
  • 出社日数が一定以上の月だけ、定期券の額を払う
  • フルリモートの人には通勤手当を払わず、出社を求めた日だけ実費を払う

厚生労働省のテレワークのガイドラインは、費用負担の扱いを労使で十分に話し合い、就業規則などに定めておくことが望ましいとしています。在宅勤務で使う通信費や機器の費用を労働者に負担させる場合は、就業規則に書く必要があります。

日額で払う方法なら、出社日数が週によって変わる学生にも合わせやすくなります。同一労働同一賃金ガイドラインの例とも合います。フルリモートの学生に、顔合わせなどで出社を求める日の交通費をどうするかも、あわせて決めておきます。

求人票への書き方

労働者を募集するときは、賃金を明示する義務があります。交通費は応募を決める条件のひとつなので、有無だけでなく、計算の方法と上限まで書きます。出社とリモートを組み合わせる求人では、出社の頻度もあわせて書くと、学生が通える範囲かを判断できます。面接に来てもらう場合の交通費の有無も、選考の案内で伝えておきます。

交通費の書き方の例
書き方伝わる内容
交通費支給全額か上限ありかが分からない
交通費支給(出社日の実費、1日上限1,000円)計算の方法と上限が分かる
交通費支給(月上限15,000円)、フルリモートの日は支給なし在宅勤務の日の扱いまで分かる

求人票全体の書き方は長期インターン求人の書き方にまとめています。時給をいくらにするかはインターン生の時給の決め方をご覧ください。

この記事は、2026年10月2日時点の法令と、厚生労働省・国税庁・日本年金機構の公表資料をもとにした一般的な説明です。税や社会保険の扱いは個別の状況で変わります。個別の状況は、税務署、年金事務所や加入している健康保険の保険者、社会保険労務士にご確認ください。

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