インターン生の時給の下限は、事業場の所在地の最低賃金
雇用契約で働く有償インターンの時給は、最低賃金法の対象です。最低賃金法4条は、使用者は最低賃金額以上の賃金を払わなければならないと定めています。
最低賃金に届かない時給を学生と合意して決めても、その部分は無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます。地域別最低賃金を払わない場合は、50万円以下の罰金の対象です(最低賃金法40条)。
使うのは、インターン生が属する事業場がある都道府県の最低賃金です。厚生労働省のテレワークのガイドラインは、自宅で働く場合も、属する事業場の所在地の最低賃金を適用するとしています。東京都の事業場に属するインターン生が地方の自宅で働いても、下限は東京都の額です。
| 都道府県 | 改定後の額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 東京 | 1,280円 | 2026年10月1日 |
| 神奈川 | 1,279円 | 2026年10月1日 |
| 大阪 | 1,231円 | 2026年10月1日 |
| 愛知 | 1,195円 | 2026年10月1日 |
| 京都 | 1,180円 | 2026年11月16日 |
| 福岡 | 1,114円 | 2026年10月4日 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | − |
ほかの道府県の額と改定前の額は、学生向けの長期インターンの時給の決まり方の表と、出典の厚生労働省の一覧で確かめられます。
試用期間中だけ最低賃金より下げられるのは、都道府県労働局長の許可を受けた場合だけです(最低賃金法7条)。許可がなければ、最初の日から最低賃金以上を払います。
職種と任せる仕事で決める
最低賃金より上の額は、会社が決めます。決め方の軸は、任せる仕事の中身です。同じ会社の中で、仕事の難しさと時給の関係を説明できるようにしておきます。学年で時給を変えるより、任せる仕事で変える方が、学生にも社員にも理由が伝わります。
パートタイム・有期雇用労働法10条は、短時間・有期雇用労働者の賃金を、職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを考えて決めるよう努めることを求めています。同法8条は、正社員との間に不合理な待遇の差をつけることを禁じています。
仕事を段階に分ける
まず、インターン生に任せる仕事を難しさで分けます。たとえば次の3つです。
- 補助:社員の作った手順どおりに作業する。リスト作成、データ入力、資料の体裁を整えるなど
- 担当:決まった範囲の仕事を自分で進める。記事の執筆、広告の運用、商談の日程調整など
- 主担当:成果に責任を持ち、進め方も自分で決める。施策の企画、ほかのインターン生への指導など
補助の段階を最低賃金かそれに近い額にし、担当、主担当と上がるにつれて時給を上げます。エンジニアやデザイナーのように、入社の時点で担当の段階から始められる人もいます。その場合は、入社時の時給を担当の段階に合わせます。
同じ段階の人は同じ時給にする
採用のたびに個別の交渉で時給を決めると、同じ仕事をしているインターン生の間で差が生まれます。差の理由を説明できないと、後から入った人と前からいる人の両方の納得を損ないます。段階ごとに額を決め、例外を作るときはその理由を記録しておきます。
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時給を上げる条件は、採用の前に決めておきます。続けるほど時給が上がる道筋が見えると、学生は先の見通しを持って働けます。
法律上も、昇給は書いておく事項です。常時10人以上の労働者を使う事業場は、就業規則に昇給に関する事項を書きます(労働基準法89条)。週の所定労働時間が正社員より短い人や期間を定めて雇う人には、雇い入れたときに昇給の有無を文書などで示します(パートタイム・有期雇用労働法6条、同法施行規則2条)。
- 1入社:時給1,280円補助の仕事から始める
- 23か月後の評価:1,330円担当の仕事を任せる
- 36か月後の評価:1,400円主担当の仕事を任せる
時給の額と時期は例です。評価の基準とあわせて会社ごとに決めます
この例では、入社時は東京都の最低賃金と同じ1,280円です。3か月後の評価で担当の仕事を任せられれば1,330円、6か月後の評価で主担当を任せられれば1,400円にします。週15時間働く場合、1週間の賃金は入社時の19,200円から21,000円になり、1,800円増えます。
評価の基準を言葉にする
段階を上がる条件は、学生が自分で確かめられる言葉で書きます。たとえば、手順書を見ずに作業を終えられる、担当した記事を修正なしで公開できる、週の作業量を自分で見積もれる、といった形です。評価の時期と、誰が評価するかも決めておきます。
評価によって時給を下げる仕組みにするなら、その基準も最初に示します。労働契約法8条は、労働条件の変更を労働者と使用者の合意によるものとしています。同法9条は、合意なく就業規則を変えて労働条件を不利益に変えることを原則として認めていません。
評価のたびに、できたことと次の段階に足りないことを伝えると、時給の差に納得しやすくなります。インターン生が続けて働く仕組みはインターン生の定着でまとめています。
固定残業代・歩合給を入れる時の注意
固定残業代
時間外労働の有無にかかわらず一定の手当を払う、いわゆる固定残業代を入れる場合、募集の段階で次の3つを示す必要があります。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代の時間数と金額
- その時間を超える時間外労働の割増賃金は追加で払うこと
若者雇用促進法に基づく指針も、固定残業代を採用する場合は、固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法を明示するよう求めています。
時間外の割増賃金は、最低賃金と比べる賃金から除かれます。固定残業代を除いた部分が最低賃金以上である必要があります。週に数日、短い時間で働くインターン生には、時間外労働がほとんど生じない働き方を組む方が、制度もわかりやすくなります。
歩合給
営業のインターンなどで成果に応じた歩合給を入れる場合、労働基準法27条により、労働時間に応じた一定額の賃金を保障する必要があります。
最低賃金との比較は、歩合給の総額を、その期間に歩合給で働いた総労働時間で割って時間額にして行います。たとえば月60時間働いて歩合給が50,000円なら、時間額は約833円です。東京都の最低賃金1,280円を下回ります。
最低賃金以上の時給を固定で払い、そのうえに歩合給を足す形なら、成果が出ない月でも下限を守れます。歩合給の計算の方法と締め日も、労働条件通知書に書いておきます。
最低賃金の改定への対応
最低賃金は毎年改定されます。令和8年度は、都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日までの間に順次発効します。発効日からは新しい額が下限です。
東京都で時給1,250円の契約なら、2026年9月30日までは改定前の最低賃金1,226円を上回っています。10月1日からは最低賃金が1,280円なので、時給を1,280円以上に上げる必要があります。
発効日は都道府県で違います。東京都と福岡県に事業場がある会社なら、東京都のインターン生は10月1日から1,280円以上、福岡県のインターン生は10月4日から1,114円以上が必要です。京都府は11月16日、沖縄県は12月2日です。
- 1,226円1,226円改定前の最低賃金
- 1,250円1,250円契約の時給
- 1,280円1,280円2026年10月1日からの最低賃金
昇給の段階を作っている場合は、下の段階だけが上がり、段階の差が縮むことがあります。前の例で入社時の時給が上がったら、3か月後と6か月後の額も見直すかを決めます。改定の答申額が公表されたら、発効日の前に全員の時給を点検します。
求人票への書き方
労働者を募集するときは、賃金を明示します。時給は、試用期間がある場合はその間の額も書きます。時給を幅で書くなら、どの条件で額が決まるかもあわせて書きます。固定残業代を入れるなら、前に挙げた3つを書きます。
- 時給:1,280円〜1,400円(経験と担当する仕事で決定)
- 昇給:あり(3か月ごとの評価で見直し)
- 試用期間:なし、またはあり(期間とその間の時給)
- 時間外労働:原則なし
継続手当のように毎月の給与とは別に払うお金は、最低賃金と比べる賃金に含めません。時給そのものを最低賃金以上にしたうえで、手当を別に書きます。手当の法律上の扱いはインターンの手当と法律、求人票全体の書き方は長期インターン求人の書き方で説明しています。
この記事は、2026年10月2日時点の法令と厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な説明です。時給の額や昇給の段階は例です。個別の状況は、社会保険労務士、都道府県労働局や労働基準監督署にご確認ください。
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