内定者インターンの時給と契約:内定と入社前の雇用は別の契約
内定者インターンを始める前に、内定そのものが何の契約かを押さえます。最高裁は昭和54年の大日本印刷事件で、採用内定によって、就労の始期を大学卒業の直後とし、一定の事由があれば取り消せる労働契約が成立したと判断しました。始期付解約権留保付労働契約と呼ばれます。
この契約で働き始めるのは卒業の後です。卒業前に働いてもらうなら、内定とは別に、入社前の期間を対象にした雇用契約を結びます。内定者インターンの時給も、この契約で決めます。
- 1内定卒業直後を始期とする労働契約が成立
- 2内定者インターンの雇用契約卒業までの期間を定めて時給で雇う
- 3卒業インターンの契約が満了
- 4入社内定の労働契約で働き始める
インターンの雇用契約を結ぶときは、ほかのアルバイトと同じく、労働基準法15条に基づいて労働条件を書面で示します。契約期間、就業の場所と業務、始業と終業の時刻、賃金の決定と計算と支払の方法、退職に関する事項などです。一般的な手順はインターン生の受け入れと労働法規にまとめています。
時給と契約期間の決め方
時給
内定者インターンの時給も、事業場がある都道府県の最低賃金が下限です。東京都なら、2026年10月1日から1,280円です。内定者だからといって、最低賃金より低い額や無給にはできません。
入社後の初任給を時給に直した額に合わせる必要はありません。額は、任せる仕事で決めます。入社後の配属先の仕事を先に経験してもらうなら、同じ時期に働くほかのインターン生と同じ段階の基準を使うと、差の理由を説明しやすくなります。段階の作り方はインターン生の時給の決め方で説明しています。
契約期間
契約期間は、卒業する年の3月31日までのように、入社の前日までに収めます。卒業後は内定の労働契約に移るため、同じ期間に2つの契約が重ならないようにします。
期間を定めて雇う内定者インターンは、パートタイム・有期雇用労働法の有期雇用労働者に当たります。雇い入れたときは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口を文書などで示します。
大学4年生を有給インターンで雇うとき
大学4年生は、卒業論文や卒業に必要な単位の取得で、時期によって働ける時間が大きく変わります。週の日数と1日の時間は、学生の授業の予定を聞いてから決めます。試験や卒業論文の締め切りの前は、シフトを減らせるようにしておきます。
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Day91の掲載について見る学生の扶養への影響(卒業する年)
内定者インターンの給与は、学生の家族の扶養に関わります。税の扶養は、その年の1月1日から12月31日までの所得と、12月31日時点の年齢で判定します。
2026年分と2027年分の所得税では、親の扶養控除を受けるには、子の合計所得金額が62万円以下である必要があります。給与だけなら、給与収入136万円以下です。12月31日時点で19歳以上23歳未満の子は、給与収入136万円超197万円以下なら、親は特定親族特別控除を受けられます。197万円を超えると控除は0円です。
4年生の秋から働く場合、その年の給与は秋から12月までの分です。卒業する年は、1月から3月までのインターンの給与に、4月からの正社員の給与が加わります。
4年生の年
- 数えるのはインターンの給与だけ
- 136万円以下なら親の扶養控除の対象
- 秋から働くなら、数か月分の給与で判定
卒業する年
- 1月から3月のインターンの給与に、4月からの給与が加わる
- 197万円を超えると特定親族特別控除も0円
- 12月31日に23歳なら特定扶養親族ではない
2026年分と2027年分の所得税の基準。給与収入だけの場合
12月31日時点で23歳になっている子は、19歳以上23歳未満の区分から外れます。扶養控除は38万円の区分になり、所得の要件は同じ62万円以下です。卒業する年は、誕生日によって扱いが分かれます。
健康保険の扶養は、税とは別の基準です。日本年金機構の基準では、19歳以上23歳未満の人は年間収入150万円未満が要件で、年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。2026年4月から始まった、労働条件通知書の賃金で年間収入を見込む方法は、契約期間が1年未満だと使えません。卒業までの短い契約の内定者インターンは、この方法の対象外になりやすい点に注意します。
会社側でできるのは、給与の見込み額を早めに本人に伝えることです。親が勤め先で年末調整の手続きをするときに、子の年収の見込みが必要になります。年収の壁の全体はインターンの扶養と年収の壁で説明しています。
源泉徴収と年末調整
内定者インターンの給与からは、所得税を源泉徴収します。本人が給与所得者の扶養控除等申告書を出していれば税額表の甲欄、出していなければ乙欄を使います。年末調整の対象は、この申告書を出している人です。ほかのアルバイト先にすでに申告書を出していないかを、雇い入れるときに確かめます。
雇用保険・社会保険の加入判断
昼間の大学に通う学生は、雇用保険と、短時間労働者の社会保険の対象から原則として外れます。ところが内定者インターンは、この例外に当たることがあります。
雇用保険
雇用保険法施行規則3条の2は、卒業を予定している人で、卒業した後も引き続きその事業に雇用されることになっている人を、適用除外の学生から外しています。内定者インターンは、これに当たります。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれれば、雇用保険の被保険者です。
健康保険・厚生年金保険
週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3以上なら、学生でも加入します。4分の3に満たない短時間労働者の基準では、学生は対象外です。ただし日本年金機構のQ&Aは、卒業した後も引き続きその事業所に使用されることになっている人を、この学生から除いています。
そのため、特定適用事業所で週20時間以上働く内定者インターンは、短時間労働者として加入の対象になります。特定適用事業所は、現在は厚生年金保険の被保険者が51人以上の企業などです。賃金が月8.8万円以上という要件は、2026年10月1日に撤廃されました。
週の所定労働時間は20時間以上か
卒業後も同じ会社で働く予定の昼間学生の場合
社会保険に入ると、学生は自分の勤め先の健康保険に加入します。親の健康保険の扶養の扱いは、親の勤め先を通じて確かめてもらいます。週20時間以上の働き方を求めるときは、保険の加入と扶養への影響を、契約の前に本人に説明します。
入社前研修との違い
内定者を集めて行う入社前研修も、扱いによっては労働時間になります。厚生労働省のガイドラインは、参加が業務上義務づけられている研修や、使用者の指示で業務に必要な学習をした時間を労働時間として扱うとしています。
労働時間かどうかは、名前ではなく、参加が義務づけられているか、参加しないと不利益があるかで判断されます。参加を求める研修やeラーニングの課題は、時間に応じた賃金を払う前提で計画します。任意の参加にするなら、参加しなくても不利益がないことをはっきり伝えます。
| 内定者インターン | 入社前研修 | |
|---|---|---|
| 目的 | 実務をしてもらう | 入社後に必要な知識を学んでもらう |
| 契約 | 入社前の期間の雇用契約 | 義務づけるなら労働時間として扱う |
| 賃金 | 時給を払う | 義務づけるなら時間に応じて払う |
内定辞退があった時
内定者インターンの途中で、学生が内定を辞退することがあります。このとき、内定の労働契約と、インターンの雇用契約は分けて考えます。内定を辞退しても、インターンの契約が自動的に終わるわけではありません。どちらも終えるのか、インターンは期間の満了まで続けるのかを、本人と確かめます。
期間の定めのない雇用は、民法627条により、解約を申し入れた日から2週間で終わります。期間を定めた雇用は、民法628条により、やむを得ない事由があれば直ちに解除できます。インターンの契約は、本人と話し合い、合意して終える方法もあります。
辞退を理由に違約金を取ることはできません。労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定する契約を禁じています。それまでに働いた時間の賃金は、全額を払います。
反対に、会社が内定を取り消す場合は、客観的に合理的で社会通念上相当と認められる理由が必要です。厚生労働省は、取り消す前に労働局やハローワークに相談するよう求めています。新卒採用の進め方は新卒採用につなげる長期インターンで扱います。
この記事は、2026年10月2日時点の法令と、厚生労働省・国税庁・日本年金機構の公表資料、最高裁判決をもとにした一般的な説明です。個別の状況は、社会保険労務士・弁護士・税理士、都道府県労働局、ハローワーク、年金事務所や税務署にご確認ください。
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