長期インターンの業務委託は、契約の名前ではなく働き方で決まる

長期インターンを業務委託で受け入れること自体は、法律で禁じられていません。問題になるのは、業務委託契約を結んでいても、実態が雇用と変わらない場合です。

労働基準法は、事業に使用され、賃金を支払われる人を労働者としています。学生かどうかは関係ありません。公正取引委員会のフリーランス法のパンフレットも、形式的には業務委託契約でも、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合は労働基準関係法令が適用されると説明しています。

長期インターンの雇用形態を決めるときは、先に任せる仕事の進め方を決めます。そのうえで、契約の形を合わせます。順番が逆になると、契約書と実態がずれます。

労働者に当たるかの判断基準

判断の土台は、昭和60年の労働基準法研究会報告です。報告は、指揮監督下の労働かどうかと、報酬が労務の対価かどうかの2つで判断するとしています。この2つをまとめて使用従属性と呼びます。

指揮監督下の労働かどうか

  • 仕事の依頼や業務の指示を断る自由があるか。断れないなら、指揮監督関係を推認させる重要な要素になる
  • 仕事の進め方について具体的な指示を受けているか
  • 勤務場所と勤務時間が指定され、管理されているか
  • 本人の代わりに他の人が作業したり、補助者を使ったりできるか。できるなら、指揮監督関係を否定する要素のひとつになる

報酬が労務の対価かどうか

報告は、報酬が時間給を基礎に計算される、欠勤すると減る、残業すると別の手当が出るといった場合は、使用従属性を補強するとしています。長期インターンの報酬を時給で決めると、この要素に当たります。

判断を補強する要素

判断が難しいときは、事業者性と専属性も見ます。高価な機械や器具を本人が負担しているか、報酬が同じ業務の正社員より著しく高いかなどです。報告は、本人が所有する機械や器具が安価な場合は問題はないとしています。

労働者と判断されやすい働き方

労働者と判断されやすい

  • 社員の指示を断れない
  • 作業の手順を細かく指示される
  • 勤務日と時間が決められている
  • 報酬が時給で、休むと減る

業務委託として扱いやすい

  • 依頼ごとに受けるか選べる
  • 成果物の仕様だけを決める
  • 作業の時間と場所は本人が決める
  • 報酬が成果物ごとに決まる

出典:労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)

長野労働局のインターンシップの資料も、使用従属関係があれば学生も労働者に当たると整理しています。社員と同じチームで、決まった時間に、指示を受けて働く長期インターンは、雇用として扱うのが基本です。

\ 月19,800円・成果報酬なし・初月無料 /

Day91の掲載について見る

業務委託にした場合に起きること

実態が労働者なのに業務委託として扱っていた場合、労働基準関係法令が適用されます。最低賃金、時間外の割増賃金、年次有給休暇、労災保険などの義務がさかのぼって問題になります。

反対に、実態も業務委託なら、労働基準法は適用されません。最低賃金の下限はなく、労災保険の対象にもなりません。報酬は成果物や作業の単位で決め、作業の時間や場所は学生が決めます。

長期インターンの報酬を業務委託で払うなら、記事1本、デザイン1点のように、成果で区切れる仕事が向いています。社員の隣で日々の指示を受ける仕事は向きません。

業務委託の報酬の決め方

業務委託では、報酬を成果物の単価と件数で決めます。たとえば記事1本5,000円で月に8本なら、その月の報酬は40,000円です。作業に何時間かかったかで報酬を変えると、時間給を基礎にした計算に近づき、労務の対価と見られやすくなります。

修正の回数や、成果物を受け取ったと判断する基準も、発注の時点で決めておきます。後から基準を厳しくして無償でやり直させると、フリーランス法の禁止行為に当たることがあります。

途中で働き方が変わる場合

最初は成果物だけを頼んでいても、慣れてくると定例会議への出席を求めたり、毎日の作業時間を指定したりすることがあります。こうした変化が重なると、実態が雇用に近づきます。働き方を変えるときは、雇用契約に切り替えるかを先に決めます。

フリーランス法で発注側に生じる義務

2024年11月1日に、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行されました。従業員を使用しない個人に業務を委託すると、この法律の対象になります。学生個人に委託する場合も同じです。

発注側に生じる義務は、会社が従業員を使用しているかと、委託の期間で増えます。ここでいう従業員の使用とは、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇っていることです。

期間が長いほど増える発注側の義務
  1. 1すべての発注取引条件を書面か電磁的方法で明示
  2. 2従業員を使う会社60日以内の支払い、募集情報の的確表示、ハラスメント対策
  3. 31か月以上の委託受領拒否や報酬の減額など7つの禁止行為
  4. 46か月以上の委託育児介護等への配慮、中途解除の30日前予告

出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット

取引条件の明示

委託したら直ちに、書面か電磁的方法で取引条件を示します。電磁的方法には、メールやSNSのメッセージも含まれます。示す主な項目は次のとおりです。

  • 発注する会社と学生の名称
  • 業務委託をした日
  • 業務の内容
  • 納品の日、または作業をする日
  • 納品の場所、または作業をする場所
  • 報酬の額と支払期日

支払期日と禁止行為

従業員を使用する会社は、成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を決め、その日までに払います。1か月以上の委託では、次の7つが禁じられます。受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しです。

長期インターンを3か月や6か月の期間で委託するなら、1か月以上の委託に当たります。6か月以上の委託を会社から解除するか更新しないときは、30日前までに予告が必要です。

募集の段階で守ること

従業員を使用する会社が、広告などで業務委託の相手を募集するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をせず、募集情報を正確で最新の内容に保つ義務があります。公正取引委員会は、フリーランスの募集と労働者の募集が混同される表示をしないよう求めています。

源泉徴収が必要な報酬

原稿料など、所得税法で決められた種類の報酬を個人に払うときは、会社が所得税を源泉徴収します。国税庁によると、1回の支払いが100万円以下なら、支払額の10.21%です。ライターのインターンに原稿料を払う場合は、この扱いになります。

学生側の税金・扶養の扱いの違い

業務委託の報酬は給与ではありません。国税庁の説明では、副業として継続的に得る収入は業務に係る雑所得になり、所得は総収入金額から必要経費を引いて計算します。給与のように給与所得控除は引けません。

この違いは、インターン報酬と扶養の関係に表れます。2026年分の所得税では、親の扶養控除を受けるには、子の合計所得金額が62万円以下である必要があります。給与だけなら、給与収入136万円以下です。

19歳以上23歳未満の子について、同じ年に120万円を受け取った場合で比べます。業務委託は必要経費を0円とします。給与なら、給与所得控除74万円を引いた所得は46万円で、親は扶養控除63万円を受けられます。業務委託なら所得は120万円です。扶養控除の要件を超え、特定親族特別控除は6万円になります。

同じ120万円でも親の控除が変わる

給与で120万円

  • 給与所得控除74万円を引く
  • 所得は46万円
  • 親の扶養控除は63万円

業務委託の報酬で120万円

  • 給与所得控除は引けない
  • 所得は120万円
  • 親の特定親族特別控除は6万円

2026年分の所得税。19歳以上23歳未満の子で、業務委託の必要経費は0円として計算

業務委託の報酬は年末調整の対象ではありません。ほかに給与をもらっている学生は、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。

健康保険の扶養も確かめます。日本年金機構は、2026年4月1日から労働条件通知書の賃金で年間収入を見込む方法を始めましたが、対象は給与収入のみの人です。業務委託の報酬がある学生は、親が入っている健康保険の保険者に扱いを確かめます。年収の壁の全体はインターンの扶養と年収の壁で説明しています。

雇用で受け入れる場合との比較

長期インターンの雇用と業務委託の違い
雇用業務委託
働き方会社の指示で、決まった時間に働く成果物の仕様を決め、進め方は学生が決める
報酬時給など。最低賃金以上成果物ごと。最低賃金の適用なし
会社の手続き労働条件の明示、労災保険、源泉徴収取引条件の明示、期日内の支払い
学生の所得給与所得。給与所得控除あり雑所得など。必要経費を引く
向いている仕事チームでの日々の業務記事やデザインなど区切れる仕事

社員と一緒に働き、育てながら任せる仕事を広げたいなら、雇用で受け入れます。最低賃金や労働時間などのルールはインターン生の受け入れと労働法規にまとめています。時給の決め方はインターン生の時給の決め方をご覧ください。

この記事は、2026年10月2日時点の法令と、厚生労働省・公正取引委員会・国税庁・日本年金機構の公表資料をもとにした一般的な説明です。労働者に当たるかは個別の実態で判断されます。個別の状況は、社会保険労務士・弁護士・税理士、都道府県労働局や税務署にご確認ください。

有給の長期インターンの求人を出すなら

Day91は、有給の長期インターンだけを載せる求人サイトです。載るのは、90日続けると91日目に企業から1万円以上の継続手当が出る求人だけです。手当は企業が自社の制度として直接払い、Day91はお金を預かりません。掲載料は月19,800円(税込)で、成果報酬はなく、初月は請求しません。